河川でドローンを飛ばす前に!航空法の許可だけでは不十分な理由と失敗しないための5ステップ

河川でドローンを飛ばす前に!航空法の許可だけでは不十分な理由と失敗しないための5ステップ

「国土交通省から航空局の許可・承認も取ったし、これで堂々と河川で空撮できる!」 もしあなたがそう考えているなら、一度立ち止まってください。ドローン法務を専門とする行政書士として、まずお伝えしたいのは、航空法上の手続きは「最低限のスタートライン」に過ぎないという事実です。

河川法において、河川は「自由使用(じゆうしよう)」が原則とされています。これは、他者の迷惑にならない限り、誰でも自由に利用できる公共の場所であることを意味します。しかし、この「自由」は決して無制限ではありません。河川管理者が「安全で快適な利用を妨げる」と判断した場合、管理権限に基づき、独自のルールや自粛要請、さらには飛行禁止措置を講じることができるのです。

この記事では、航空法と河川法の「二重のハードル」をクリアし、現場でのトラブルや二度手間を確実に防ぐための実務知識を解説します。

河川によってルールが全く違う?知っておくべき「3つの飛行パターン」

ドローンに対するスタンスは、河川管理者によって驚くほど異なります。これは、各管理者がその地域の特性や過去の事故・トラブルの経緯を考慮し、「安全維持」を最優先に判断しているためです。

実務上、ルールは大きく以下の3つのカテゴリーに分けられます。

  • パターン1:原則飛行禁止(公共性がある場合のみ例外) 人口密集地や利用者が多い河川に多く見られます。 (例:淀川、猪名川、荒川下流など) ※これらは原則禁止ですが、「公共事業に伴う撮影」など公共性が極めて高い場合に限り、個別に相談を受け付けているケースがあります。
  • パターン2:原則自由だが「一時使用届」が必要 飛行そのものは制限されませんが、管理者がいつ・誰が・どこで飛ばしているかを把握するために、事前に書類提出を求めるパターンです。 (例:信濃川下流、栃木県管理河川など)
  • パターン3:届出不要(法令とモラルを遵守) 特段の届出なしに飛ばせますが、当然ながら航空法や他者への配慮は必須です。 (例:渡良瀬川、荒川上流、利根川下流など)

特に「原則禁止」を掲げる淀川河川事務所などは、以下のような明確なスタンスを打ち出しています。

「本来自由に利用できる空間ではあるものの、事故やトラブル防止の観点から飛行禁止となっております」

このように、場所によって180度ルールが変わるため、事前の調査が不可欠です。

「川の中にある公園」は別世界?見落としがちな管理者の罠

河川敷にある公園やグラウンド、サイクリングロードを飛行させる際は、さらに高度な注意が必要です。なぜなら、そこには「河川法」と「自治体の条例」という二重の規制構造が存在するからです。

河川敷内の施設は、国土交通省(河川管理者)ではなく、地元自治体が管理を委託されているケースが多々あります。河川法上は「自由使用」の範囲内であっても、自治体の「公園条例」等でドローンが禁止されていれば、そこでの飛行は違法・違反となり得ます。

  • 具体例:恵庭市の「漁川(いざりがわ)河川緑地」 ここでは、市独自の条例によってドローンの飛行が明確に禁止されています。

また、ダムや水門などの河川管理施設付近(例:荒川ダム周辺)では、通常の河川とは異なる追加の届出条件が設定されていることがあります。さらに、河川敷内には「民有地(個人所有の土地)」が混在している可能性もあり、その場合は土地所有者の同意という民事上の手続きも必要になります。

トラブルを未然に防ぐ!管理者特定と手続きの「5ステップ」

現場での混乱を避け、クリーンな飛行を実現するための実務ステップを解説します。

  • Step 1:河川管理者の特定 まずは飛行予定地が「一級河川」か「二級河川」か、誰が管理しているかを特定します。一級河川については、国土交通省のホームページから管理区間と連絡先を確認するのが最も効率的です。不明な場合は、周辺の市役所に電話して「〇〇川の管理者はどこか」と尋ねるのが確実な手段です。
  • Step 2:手続きの有無を調査 いきなり電話で問い合わせるのではなく、まずは管理者のホームページで「ドローン」「無人航空機」に関する記載がないか確認しましょう。ホームページに詳細があるにもかかわらず電話を繰り返すと、担当者の大きな負担となり、結果として全面禁止などの厳しい規制を招く原因になりかねません。
  • Step 3:必要書類の準備 「河川一時使用届」が必要な場合、管理者のサイトからWordやPDFをダウンロードします。地図、航空局の許可承認書の写し、保険証券、国家ライセンス(技能証明書)の写しなどを添えて提出します。 ※重要: 例えば「荒川下流」のように、提出期限を「利用日の10開庁日前まで」と厳格に定めている事務所もあります。スケジュールには余裕を持って対応してください。
  • Step 4:エビデンスの保管 「届出不要」と確認できた場合でも、その根拠となったホームページのスクリーンショットを保存しておきましょう。受理されたメールや書類の控えとともに、現場で第三者から声をかけられた際、即座に提示できるようにしておくことがプロの立ち振る舞いです。
  • Step 5:航空法に基づく最終対応 河川の手続き完了後、特定飛行に該当する場合はDIPS(飛行計画通報機能)への登録と、飛行日誌の記録を確実に行ってください。

管理者へ相談する際は、「具体的な飛行場所(座標や地図)」「目的(業務か趣味か)」「安全対策(立入禁止区域の設定やコーン設置の有無)」をセットで伝えられるようにしておきましょう。

届出不要な場所でも「DIPSへの通報」をすべき理由

たとえ河川管理者が「届出は不要」としている場所であっても、DIPSでの飛行計画通報は必ず行うべきです。

現在、河川上空は物流やインフラ点検を目的とした「レベル3.5(補助者なし目視外飛行)」などの長距離飛行を行う事業者が増えており、いわば「ドローンの高速道路」になりつつあります。 DIPSへの通報は単なる義務ではなく、同じ空域を使う他者に対する「周知(しゅうち)」であり、空中衝突を回避するための強力な武器、そしてプロとしてのエチケットです。自分の身を守り、業界全体の安全性を高めるためにも、通報機能の活用を強く推奨します。

ルールを味方につけて、最高の空撮体験を

河川でのドローン飛行において、失敗しないためのポイントは以下の通りです。

  • 「航空法」だけでなく「河川法(管理者の判断)」を確認する。
  • 飛行ルールは「禁止」「届出必要」「自由」の3パターンがある。
  • 河川敷内の「公園条例」や「民有地」の存在を忘れない。
  • 根拠となるエビデンス(HPの控え等)を現場に携行する。
  • DIPSを活用し、他者への「周知」を徹底する。

河川のルールは、過去の事故や社会情勢の変化に伴い、わずか数ヶ月で更新されることも珍しくありません。

事前の丁寧な確認こそが、あなたをトラブルから守り、最高の空撮体験をもたらす唯一の道です。

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