2020年6月17日、株式会社プロドローン(以下、PRODRONE)、株式会社アツミテック、環境技術センター、国立研究開発法人産業技術総合研究所 極限機能材料研究部門 鷲見裕史 主任研究員は、長時間飛行・作業が可能な固体酸化物形燃料電池(SOFC)ドローンを世界で初めて実証したと発表しました。
今回開発されたのは、液化石油ガス(LPG)が利用でき、上空でも発電可能なSOFCシステムです。
この開発により、ドローンや二次電池へSOFCで発電した電力を供給できるため、長時間飛行・作業が可能になります。
また、上記開発に加えて、ドローンの電力負荷変動が大きい場合に電極内部でLPGを水素や一酸化炭素に安定的に改質できる内部改質SOFC技術も開発しました。
この開発により、汎用的で容易な持ち運びが可能になり、水素インフラ整備前の地域における、物流、インフラ点検、災害対応などの分野で貢献することが期待されています。
なお、両開発は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「ロボット・ドローンが活躍する省エネ社会の実現プロジェクト」の助成を受けて行われました。
上記画像は、アツミテックが開発したドローン搭載用SOFCスタックの外観です。
単位体積あたりの出力密度を向上させるため、平板型セルが採用されています。
発電した電気を集電する部材を改良したことで、電極面積あたりの出力密度が従来の約2倍まで改善しました。
また、アツミテックが保有する金属加工技術を応用してセパレーターの形状などの軽量化を図り、2017年に発表した「コンパクトハイパワー燃料電池システム」と比較して出力あたりの重量を60%低減しました。
上記画像は、今回開発されたLPG駆動SOFCシステムの外観です。
このSOFCシステムには、産業技術総合研究所が開発した内部改質SOFC技術が用いられています。
電極内部でLPGを水素や一酸化炭素に改質することで、市販のLPGカセットボンベを燃料として使用でき、水素インフラ整備前の地域でも使えるようになりました。
さらに、ドローンの電力負荷変動でSOFCの発電量や作動温度が急激に変化しても電極性能が劣化しない内部改質SOFC技術を新たに開発し、アツミテックが設計したSOFC自動起動・発電・停止制御システムに組み込みました。
これにより、電力負荷変動が大きいドローンでも家庭用燃料電池システム「エネファーム」などで搭載されている外部改質器が不要になり、システムの簡略化・軽量化を達成しました。
上記画像は、飛行試験中のSOFCドローンです。
PRODRONEは、LPG駆動SOFCシステムが搭載できる30kgまでのペイロードに対応したドローンを開発しました。
このドローンには、重量あたりの消費電力量をできるだけ低減させる工夫が施されており、プロペラの振動や気流、離着陸の衝撃などがSOFCシステムの作動に影響を与えない設計となっています。
上記画像は、従来のドローンとSOFCドローンの電力供給の模式図です。
従来のドローンは、LiPo二次電池からの給電のみです。
SOFCドローンでは、ドローンの電力負荷が大きい場合はSOFCとLiPo二次電池からドローンへ、電力負荷が小さい場合はSOFCからLiPo二次電池へ充電のために電力供給されます。
これにより、1時間を超える長時間飛行・作業が実現できる見通しが達成、今後さまざまな移動体やロボットなどへのSOFCの応用展開が期待されています。
出典元:PRODRONE「世界初の固体酸化物形燃料電池ドローンを開発し、長時間飛行を実証-LPG燃料により、さまざまな地域での物流、インフラ点検、災害対応などに期待-」