世界初!北海道上士幌町でドローンを活用した「空飛ぶ牛の受精卵」移植実証に成功

世界初!北海道上士幌町でドローンを活用した「空飛ぶ牛の受精卵」移植実証に成功

2022年8月10日、北海道上士幌町(町長:竹中 貢)とJA上士幌町(代表理事組合長:小椋 茂敏)、株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路 圭輔 以下:NEXT DELIVERY)は、JA全農ET研究所(北海道上士幌町、以下:ET研究所)の協力のもと、7月1日に上士幌町でドローンを活用した、世界初の牛の受精卵配送の実証実験を実施したことを発表しました。

具体的には、ET研究所で採卵された牛の受精卵(冷凍保存されない新鮮卵)をドローンによって上士幌町内の農家宅へ配送し、移植をする実証を実施し、成功しました。牛の受精卵のドローン配送は世界初の取り組みです。なお、本取り組みは国の「デジタル田園都市国家構想推進交付金」を活用した取り組みです。

本実証実験の詳細

背景と目的

日本の肉牛生産においては、生産基盤の縮小に伴う構造的な子牛供給不足が深刻化する中、和牛の子牛共有の手段として、乳牛を借り腹とした和牛受精卵移植(Embryo Transfer)による子牛生産の重要性が増しています。ET研究所は、早くからこの世界に類を見ない受精卵供給体制を構築し、JAと一体となり和牛生産基盤を支えており、ET妊娠牛を全国に供給しています。

一般的な受精卵移植は、凍結・保存した受精卵を使用しますが、凍結や解凍の過程で受精卵が損傷を受ければ、受胎率は低下すると考えられます。一方で新鮮卵は、冷凍受精卵よりも安定した受胎率は得られますが、採卵当日に移植を行う必要があり、採卵・流通・利用の関係上、広域流通は困難となっています。

本実証は、新鮮卵の受胎率や広域流通の可能性を検証するもので、ドローン配送による温度管理・振動・配送後の移植状況の評価と、従来のナイタイ高原牧場へ牛を運び新鮮卵を移植する方法、あるいは農家が自ら研究所まで受精卵を車で引き取りに行く方法と、ドローンを活用し農家庭先に輸送する方法を比較し、輸送にかかる農家の手間やコストなどを比較して、ドローン配送の有効性の検証を行いました。なお、今回の実証を含め今年度中に計4回の実証を予定しています。

実施概要と結果

■ポットに入れられた受精卵が、ET研究所から熊谷牧場(熊谷肇さん経営)まで片道約7.1kmの距離を約13分でエアロネクストが開発した物流専用ドローンAirTruckで配送され、移植師に手渡された。受け取った移植師は、直ちに発情同期化させた乳牛(ホルスタイン育成牛)に移植処置を行い、約10分後に移植を完了した。

■実証の結果、今回のドローン配送による温度管理・振動・配送後の移植状況は問題ないレベルであり、実用に耐えうることが確認できた。

■実験に協力したJA上士幌町の小椋茂敏組合長のコメント
「輸送時間が短く、振動が少ないほど、受胎率は向上する。運んだ受精卵が今後、どのような和牛や肉質になるのか追跡し、進めていければと思う。」

■受精卵が配送された熊谷牧場を経営する熊谷肇代表のコメント
「今は士幌町にある施設まで片道15分以上かけて受精卵を取りに行っている。ドローン配送は、迅速かつ安全に輸送でき、牛の供給不足解消や仕事の効率化にもつながると思う。家畜防疫上も良い。」

各分野においてデジタル・トランスフォーメーションが進行する中、畜産業界においても、少子高齢化による担い手不足という深刻な課題に直面しており、各テクノロジーの活用が求められています。上士幌町では昨年11月にドローンを活用した牛の検体(乳汁)のドローンと陸送によるリレー配送の実証を日本で初めて実施し成功させ、乳汁に限らず、デジタルを活用した新たな配送の可能性も見据えたドローン配送を含む新スマート物流の社会実装に向けて推進しています。この度、配送等の課題の多い畜産業界で、特に細心の管理体制での実施が必須である受精卵の配送において、新スマート物流の実装可能性を検証することができたのは大変大きな成果となりました。

今後実用化に向けて、今年度中に違う季節における複数回の実証を予定しており、引き続き、連携して検討を重ねる予定です。また、畜産業界のみならず、その他の産業界への応用、拡大の可能性も広がります。

出典:株式会社NEXT DELIVERY「世界初、北海道上士幌町でドローンを活用した「空飛ぶ牛の受精卵」移植実証に成功

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