2022年7月7日、インプレスグループでIT関連メディア事業を展開する株式会社インプレス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小川 亨)のシンクタンク部門であるインプレス総合研究所は、新産業調査レポート「水中ドローンビジネス調査報告書2022」の発売を開始しました。
現在、空飛ぶドローンを制御する技術の応用によって生まれた、小型のROV(Remotely Operated Vehicle)、いわゆる水中ドローンが点検や調査などの用途で使われています。本書では、深度十数mから100m程度の比較的浅い水域において有線で遠隔操縦できる、空中重量100kg程度まで、機体サイズ長辺40cmから1m程度までのROVを「水中ドローン」と定義しています。
この数年で産業用途に特化した機体が相次いで登場したことで、水中ドローンの活用は、海洋土木建築やインフラ・設備点検、環境調査、水産業や公共(水難救助や災害調査)といった様々な産業分野で広がっています。また、国や業界団体による普及啓発に向けた取り組みも活発化しています。
本書は、水中ドローンの定義を明確化し、市場全体の動向と、今後の展望を多角的に分析した調査報告書です。様々な産業分野における水中ドローンの役割や活用事例、可能性や課題を明らかにし、水中ドローンビジネスに関する国や事業者の最新動向をまとめています。
産業用水中ドローンの市場規模は2025年度に62億円
2021年度の日本国内の産業用水中ドローンの市場規模(販売金額)は23億円と推測されます。2022年度には前年度比25%増の29億円に拡大し、2025年度には62億円(2021年度の2.7倍)に達すると見込まれます。
2017年以降、中国や米国といった海外を中心に10万円後半から100万円程度で購入可能な安価な機体が現れたことにより、国内の産業用水中ドローンの機体販売数が増加し、一部の点検事業者や水産事業者が利用し始めました。
2021年には、多機能で拡張性の高い産業用水中ドローンが登場したことや水中ドローンに搭載可能な機器の登場により、産業用途に特化したカスタマイズ機体が広がりを見せ、市場が徐々に拡大してきています。
拡大する水中ドローンの活用シーン
項目 | 水中ドローンの活用が期待される具体的なシーン |
土木建築 | 港湾施設・漁港・洋上風力発電施設・海中ケーブルなど水中構造物建設に関する現場確認等 |
インフラ・設備点検 | 港湾施設・漁港・洋上風力発電施設・護岸・防波堤・波除堤・テトラポット・船舶・ブイ・河川・ダム・橋梁・砂防・湖沼・貯水槽・工場・プラント・発電所・工業用水管路・下水道管路・電力取水管送水管等の点検 |
水産業 | 養殖場の魚介類の生育調査、定置網や養殖場などの水中網や水族館設備の点検・清掃、魚群探査、漁礁の調査、海底生物採取、水質・環境調査等 |
エンターテイメント・娯楽 | メディアや報道での水中映像撮影、水族館などレジャー施設での水中映像撮影、ダイビング、レジャー、釣り堀などの管理等 |
救助・安全管理 | 海水浴場・河川水辺における水難救助・捜索、台風や大雨による水害時の現場確認および水難救助・捜索、海難救助・捜索、沈没船捜索および状況確認、潜水士安全対策、水中作業現場の状況確認等 |
学術調査・研究 | 水中の環境観測、水質・環境調査、生態調査、地質学調査、海底地形図調査、考古学調査、沈没船調査、海底生物採取等 |
水中ドローンは潜水士の作業の代替、または作業を補助するツールとして、土木建築やインフラ設備点検、水産業に加え、エンターテイメントや救助・安全管理などの公共分野、学術調査など、様々な領域での活用が期待されています。
現在、水中ドローンの活用は土木建築事業者や点検事業者、水産事業者が中心となっており、港湾、漁港、海岸、発電所、ダム、河川などにある設備の水中構造物の点検や、定置網や養殖場の調査点検などで先行して始まっています。特に老朽化が進んでいる国内の河川や港湾施設などのインフラ・設備点検において、作業を効率的に行えるツールのひとつとなりつつあります。
2021年以降、産業用途に特化し、ソナー等のセンサー類やロボットアームなどの幅広い周辺機器を搭載できる、高性能かつ拡張性の高い水中ドローンが登場したことで、様々な産業分野で導入が加速し、用途も広がってきています。以前は難しかった濁度が高い水域や流れの強い環境への対応も可能になってきているほか、事例としてはまだ少ないものの、潜水士の代替として清掃や採水、採泥を行うなど、より高度な活用が始まっています。
2023年以降は、洋上風力発電施設の点検作業や、藻場をはじめとするブルーカーボン生態系の保全と創造に向けた取り組みなど、新たな領域での利用が広がっていくことが見込まれます。今後、様々な事業者が水中ドローンの利用を進めていくなかで、水中ドローンの用途の開拓と技術開発が進み、水中ドローンの導入は一気に加速するとみられます。
構成・各章の概要
第1章の「水中ドローンビジネスの現状」では、産業用水中ドローンの市場規模や、水中ドローンの価値や効果、活用が期待されるシーン、プレイヤーの整理、業務活用の課題などをまとめています。
第2章の「水中・水上ドローンの最新トピックス」では、水中ドローン・水上ドローン業界における最新動向について、2021年度に目立ったトピックスを中心に解説します。
第3章の「産業分野・用途別の動向」では、「海洋土木建築」「インフラ・設備点検」「水産業」「公共(遭難救助や災害調査)」「環境調査」の5分野について、水中ドローン活用の現況、水中ドローン活用のメリットや特長、課題、今後の展望などを分析します。
第4章の「各省庁の動向」では、水中ドローンに関係する省庁の動向を解説します。
第5章の「企業動向」では、水中ドローンの機体・パーツメーカー、サービス提供事業者、業界団体の動向を解説します。
調査報告書の製品形態、および販売に関する案内
- 書名:水中ドローンビジネス調査報告書2022
- 著:藤川 理絵、インプレス総合研究所
- 発行所:株式会社インプレス
- 発売日:2022年7月7日(木)
- 価格:
CD(PDF)版・電子版 93,500円(本体85,000円+税10%)
CD(PDF)+冊子版 104,500円(本体95,000円+税10%) - 判型:A4判
- ページ数:292ページ
- URL:https://research.impress.co.jp/rov2022
出典:株式会社インプレス「水中ドローンビジネス調査報告書2022」