2023年3月4日、アジア初の民間企業にひらかれた商業宇宙港「北海道スペースポート(以下:HOSPO)」を整備、運営する北海道大樹町(町長:酒森 正人、以下:大樹町)とSPACE COTAN株式会社(本社:大樹町、代表取締役社長兼CEO:小田切 義憲 以下:SPACE COTAN)は、東海大学の学生ロケットプロジェクトが、大樹町にてハイブリッドロケットの打上げ実験を実施し、成功したことを発表しました。
このプロジェクトは2004年から大樹町にて実験を行ってきましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、5年ぶりの実施となりました。前回から強度を高めた機体は無事に打上がり、将来の宇宙空間到達と超音速飛行に向けた技術実証に成功しました。また、学生が打上げ経験を積むことができました。
大樹町とSPACE COTANは、今後も大学や民間企業、団体を積極的に受け入れ、航空宇宙実験の聖地として航空宇宙分野の研究開発や産業の発展に貢献していくとのことです。
実験概要
- 実験日:2023年3月4日(土)
- 実験場所:北海道広尾郡大樹町美成の農道
- 実験目的:
ロケット打上げ経験を得るとともに、最終目標の高度100㎞以上の宇宙到達に向けて次機体以降の開発方針を明確にします。確実な打上げとロケット回収後の解析を図り、数年後の超音速機につながる技術実証を行いました。 - 改善点:
2016年の打上げ時にロケット先端のノーズコーンが脱落し、機体が空中分解したことから、ノーズコーンを分離する機構を改良し強度を高めました。 - 実験結果:
予定通りエンジンを燃焼し、打上げ後9.32秒で高度416.45mまで到達しました。パラシュートを開傘させ、射点から北北東440mの地点に落下、機体を回収しました。
ロケットの概要
- 名称:ハイブリッドロケット57号機
- 機体:
市販のGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)チューブを主体としたモジュール構造。
アルミニウム合金製のリングで6個のモジュールを結合。 - エンジン:
固体のWax燃料(ロウ)。
酸化剤は液化亜酸化窒素。
推力660N(67.3kgf) - 全長:2.045m
- 直径:154mm
- 乾燥重量:10.725kg
- 酸化剤含む重量:11kg
民間から政府、大学の航空宇宙実験を支える北海道スペースポート
HOSPOでは1,000mの滑走路やロケット発射場などを使った航空宇宙分野の実験が多数行われています。令和3年度はインターステラテクノロジズ株式会社、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)、株式会社 SKyDrive、国立大学法人 電気通信大学、三菱重工業株式会社、国立大学法人 室蘭工業大学などがロケット打上げ、大気球、空飛ぶクルマ、ドローンなど延べ30件の実験を行いました。
今後は、航空宇宙事業者の皆様の研究開発をより支援していくために、新たなロケット発射場Launch Complex-1(LC-1)の整備(2023年度完成予定)と、滑走路の300m延伸(2024年度完成予定)など、実験環境の整備を進めていくとのことです。
以下画像は、航空宇宙分野の研究開発を支えている北海道スペースポートの様子です。
団体・会社概要
東海大学スチューデントアチーブメントセンター 学生ロケットプロジェクト
- 団体責任教員:教授 那賀川 一郎(なかがわ いちろう)
- 団体責任者:学生代表 岡崎 智哉(おかざき ともや)
- 実験責任者:プロジェクトマネージャー 豊田 瑞樹(とよだ みずき)
- 所在地:神奈川県平塚市北金目4-1-1
- 団体概要:
宇宙技術者を目指す学生が実践的な知識や技術を得ることを目的としたプロジェクトで、1995年に発足しました。例年、秋田県の能代宇宙イベントと大樹町で1回ずつ、年2回の打上げを実施しています。コロナ禍等のため打上げ実験は4年ぶり、大樹町での実験は5年ぶりとなりました。大樹町では2004年から実験を行っており、今回で28機目の打上げとなりました。能代宇宙イベントを含めた打上げ総数は50機となります。
北海道大樹町
- 代表:町長 酒森 正人(さかもり まさと)
- 所在地:北海道広尾郡大樹町東本通33番地
- 事業概要:
人口5,400人の一次産業が中心の町です。昭和59年の北海道大規模航空宇宙産業基地構想で航空宇宙基地の適地とされ、以降40年近くにわたり宇宙のまちづくりを推進しています。令和4年度に小型人工衛星搭載ロケット発射場「Launch Complex-1(LC-1)」の建設に着手し、北海道スペースポートを核とした宇宙版シリコンバレーの形成を目指しています。
SPACE COTAN株式会社
- 代表者:代表取締役社長兼CEO 小田切 義憲(おだぎり よしのり)
- 所在地:北海道広尾郡大樹町字芽武183番地
- 事業概要:
大樹町からの委任に基づくHOSPOプロジェクトの推進業務全般(スペースポートの管理運営、整備資金調達支援、射場の設計、国の認定取得、国内外の顧客開拓、PR活動等)のほか、宇宙産業活性化に向けた自主事業等を行っています。
北海道スペースポート(HOSPO)とは?
HOSPOは、2021年4月に大樹町で本格稼働したアジア初の民間にひらかれた商業宇宙港です。大樹町はロケットを打上げる東・南方向に海が広がっていることや、広大な土地による拡張性の高さなど地理的優位性から、世界トップクラスの宇宙港の適地と言われ、約40年前から宇宙産業誘致を進めてきました。
大樹町とSPACE COTANは、「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョン実現に向けて、ロケットやスペースプレーンの発射場・実験場を整え、打上げ支援業務を行います。世界の宇宙ビジネスを支えるインフラとして、研究開発やビジネスのサポート、地方創生を含むビジネス機会を提供します。
現在、新たなロケット発射場の整備と既存の1,000m滑走路の延伸工事を実施中で、2023年度の発射場完成後は国内外のロケット会社が利用します。滑走路延伸は2024年度に完了予定です。
整備費用に充てる企業版ふるさと納税は、寄附件数の多さや地域特性を活かした地方創生の取り組みで人口減少に歯止めがかかっていることなどが評価され、大樹町が令和4年度の内閣府特命大臣表彰を受けました。