2022年12月6日、株式会社A.L.I. Technologies(本社:東京都港区、代表取締役社長:片野大輔、読み:エーエルアイテクノロジーズ、以下:A.L.I.)は、株式会社マプリィ(本社:兵庫県丹波市、代表取締役:山口 圭司、以下:マプリィ)との間で、インフラ構造物点検におけるドローンと3D点群データを活用したハイブリッド型ソリューションの共同展開を目的とした業務提携契約を締結したことを発表しました。
業務提携の背景と目的
マプリィは三次元情報などのあらゆる空間情報を手軽に取得し、シームレスに解析・活用するためのアプリを開発しているスタートアップ企業です。林業分野ではマプリィが特許を取得している「立木情報の計測と解析」及び「木材検出(LiDAR・フォトグラメトリ)」の技術を使ったソリューションを確立しており、令和4年度に発表されました林野庁のスマート林業構築普及展開事業報告書においては、スマート林業の実現に資する技術として同社の「地理空間情報のアプリプラットフォーム」が取り上げられています。
同時に、同報告書においてA.L.I.が販売及びソリューション提供している米国製AI搭載ドローンのSkydioが、森林内空撮と森林の三次元モデル化というテーマで使用されており、林業におけるドローンと地理空間情報ソリューションアプリの親和性の高さが証明されています。
今回の業務提携では、マプリィが林野分野で培った本技術をA.L.I.が注力しているインフラ構造物点検に応用することで、維持管理データ(定期点検)の効率化を推進するソリューション(点検手法及びアプリケーション)を両社で新規開発し、地方自治体における橋梁等道路施設の点検委託費を大幅に削減することで、国土強靭化及び持続可能な社会作りに貢献することを目的としています。
インフラDXコンペにて優秀技術賞受賞
業務提携を視野にいれてA.L.I.及びマプリィの両社で開発を進めていたソリューションが、近畿地方整備局主催のインフラDXコンペにて、「ドローン点検必携アプリ(マプリィ点検調査版)~近接3D点群とドローン点検統合スマホアプリ~」として優秀技術賞を受賞しました。
本ソリューションは基礎自治体において喫緊の課題である維持管理データ(定期点検)の効率化を実現するものです。手書きから図化というアナログな作業工程を、3次元点群、画像自動整理に置き換える点検用アプリケーション(以下:本アプリ)となります。
主な機能としては、点検・調査時のドローン撮影とスマートフォンで近接3D点群データを取得し、地図上に図面データを重ね、画像・動画・3Dデータを格納します。既存の2D図面、3次元点群、ドローン撮影データ情報の統合が可能で、現場における野帳作成と内業時のデータ整理作業の負担が軽減されます。また、ドローン点検の課題である、画像位置や撮影部材とデータの紐づけを、アプリ内にて図面上にプロットすることで可視化することができます。更には、発注者と請負事業者との間のデータの受け渡しや現場速報も、本アプリを利用してスマートフォンのみで可能となります。
近年、インフラ長寿命化計画の行動計画にドローンに代表される新技術の活用が盛り込まれたことにより、橋梁点検におけるドローンの利活用が急速に広がりを見せています。しかしながら、点検はドローンがカバー可能な外観の点検でなく、近接で実施する視診も合わせた適正な活用が重要となります。これまで別々に実施していた作業一連を連携させるツールが存在していなかったため、本アプリを用いた点検手法が広く浸透することにより、橋梁点検におけるインフラDXの実現が加速するものと考えられます。
経済効果
点検車両を用いた従来の点検方法をもとに直近の歩掛単価で試算すると、一橋あたり平均約23.5万円のコストがかかることになります。これをA.L.I.で発売・運用しているSkydio社製ドローン及び本アプリを使うことで、データ取得の外業が6時間から1時間に、記録作成の内業が3時間から0.5時間に削減可能です。合わせて点検車両や交通整理人員なども不要となるため、上記の業務内容を交通規制開始から損傷図野帳作成までで歩掛の直工換算をすると、60%の効率化及びコスト削減が可能となります。地方公共団体における橋梁点検の年間委託費用だけでも、試算すると500億円程度の経費が必要となりますので、年額300億円の削減効果が期待されます。
今後の展開
A.L.I.では土木ユニットを起点に、本アプリを活用した橋梁点検を推進しています。同時に、本アプリとSkydioの機体を日本全国の建設コンサルタント並びに調査会社に販売提供することを開始する予定です。橋梁点検の新しい標準手法として認知が拡大されることで、全国の基礎自治体におけるインフラ点検費用の削減を達成し、国土強靭化及び持続可能な社会作りに貢献していくとのことです。
また、道路橋だけでなく、次年度以降に管轄が厚生労働省から国土交通省に移管予定の水管橋点検などにも応用していくことを予定しています。水管橋点検は様式調書が定まっておらず、道路橋以上にコスト削減効果があると試算していますので、次年度以降の水管橋点検の標準化に寄与していくとのことです。
出典:株式会社A.L.I. Technologies