米国では120兆円を超えるインフラ法案が可決され、今後5年間における国内インフラの大幅な刷新を進めることが発表されるなど、先進国におけるインフラの老朽化と労働力不足は年々深刻度を増しています。
このような課題に対し、従来の仮設足場を利用する工法は引き続き有効であるものの、足場の組み立てにより工期が長くなることや高コスト化、台風・地震などによる倒壊・落下事故の危険性、高所作業エンジニアの不足などが指摘されております。そのため、高所作業をドローンやロボットに置き換えていくことは産業界を通した喫緊の課題であります。
2022年6月9日、株式会社アイ・ロボティクスとENEOS株式会社とは共同してドローンを利用した石油タンクの塗装を行い「ドローン壁面補修」の石油タンクにおける実用性を根岸製油所で検討したことを発表しました。
実証実験動画・概要
上空に静止させたドローンから電動ウインチで外壁吸着ロボットを吊り上げ、外壁吸着ロボットに特殊なデバイスを搭載して高圧洗浄や塗装を行っています。ドローンの挙動と電動ウインチの巻き上げスピード、吹付スピードや塗料の粘度等を、非常に高度なすり合わせ技術により精密制御しています。
動画1 石油タンクの塗装の様子です。
動画2 石油タンクの高圧洗浄の様子です。

タンク補修の未来像
世界には25,000基以上の原油貯油タンクがあるとされ、経済産業省資源エネルギー庁の統計によると、国内には原油貯油タンクは500基以上あるとされています。半製品や燃料油のタンクも入れるとその数は10倍以上になるとされています。
また、さらに身近なところに目を向けると、福島第一原子力発電所の処理水のタンクは1000基を超えて拡張され続けており、この老朽化対策も非常に差し迫った状況となっています。
タンクのメンテナンスは世界の課題であり、機械化・遠隔化・自動化の市場規模も非常に大きいものと考えられます。
ドローンタンク補修が自動で行われているイメージ図です。

今後の取り組み
引き続き、株式会社アイ・ロボティクスとENEOS株式会社は取り組みを続けるべく、国内の製油所での実証実験を計画しています。これらを経てさらなる最適化を進め、世界に先駆けてタンク補修の機械化・遠隔化・自動化を実現して行く予定です。
出典:株式会社アイ・ロボティクス「ENEOSとアイ・ロボティクス特有技術による石油タンクのドローン塗装の有効性を根岸製油所内で確認」