2021年5月25日、風力をダイレクトに動力として利用した帆走の自動化技術を通して、持続可能な社会の実現に貢献するエバーブルーテクノロジーズ株式会社(以下:エバーブルーテクノロジーズ)は、2mクラスの帆船型ドローン「Type-Aプロトタイプ」を用い、逗子湾にて日没から夜間にかけて連続1時間の夜間航行に成功したことを発表しました。
実証実験に使用した「Type-Aプロトタイプ」は、2020年に開発された2mクラスの無人操船ヨット(帆船型ドローン)として、これまで機動性テストや滞在型テスト、長時間稼働テストを行ってきました。
そして今回、有人ではリスクの高い夜間航行を無人操船ヨットで行うことにより、これまで難しかった夜間の密漁対策や捜索作業、長時間の海洋調査などを可能にすることを想定し、神奈川県逗子市逗子海岸にて連続1時間を無人で帆走する実証実験を行いました。
実証実験の概要
FPV用カメラとスマホのTV会議アプリ(zoom)を利用し、リアルタイムに映像を伝送、遠隔操縦者と複数の場所からの遠隔モニタリングを実現しました。
また、風向や風速といった海況情報のテレメトリーやソナーによる水深データをロギングしました。5:30pmから6:00pmの日没をはさみ、6:30pmまでの連続1時間を遠隔操縦と自動操縦を適宜切り換えながら無人帆走、方向転換や着岸時は補助モーター動力を併用しました。

実証実験時の海況と実証された概要は次の通りです。
- 風向:南東の風(平均148度)
- 風速:最大2.38m/s(4.62ノット)平均0.72m/s(1.40ノット)
- 艇速:最大 1.88m/s(3.65ノット) 平均 0.4m/s(0.78ノット)
- 水深:最大1.54m 平均1.02m
- 稼働時間:約60分
- 予想最大稼働時間:約5時間(バッテリー容量と使用量から計算)
- 搭載物:FPVカメラ、スマホ(約0.5kg)、ソナーユニット(約1kg)合計1.5kg
※風向風速は「Type-Aプロトタイプ」搭載の風向風速センサーから、艇速はGPS情報から取得、水深はソナーユニットから取得しました。
想定する活用イメージ

夜間航行の危険性/コスト面でのデメリットを解消
夜間の航行は危険がともない、特に海況の影響を大きく受けやすい小型舟艇やヨットは基本的に夜間航行はできません。
一方で、夜間に密漁が行われたり、不審船が現れたりしてその対策が求められています。
夜間航行に危険が伴うことや、人手不足、人件費や燃油代がかかるといった理由で有効な対応はこれまでできませんでした。
夜間の警備/監視、密漁船や不審船の発見
エバーブルーテクノロジーズの開発する無人操船ヨット技術は、無人で遠隔操縦したり、予め設定した航路を自動で回遊することができます。
そのため、これまで難しかった夜間の見回り、密漁船や不審船の発見を遠隔から安全に行うことができます。

長時間の海洋調査/救難・捜索活動支援
このような特徴をもつ小型無人操船ヨットは、遭難者の捜索や長時間に渡る海洋調査でも役立ちます。
沖に流されてしまった要救助者の捜索を夜間、広範囲かつ長時間できるのは、風力をダイレクトに推進力にかえる帆船ならではのメリットで、現状で連続5時間、今後大容量バッテリーや太陽光発電の併用などで24時間以上の稼働時間を目指しています。
視認性の高さと低速を生かした安全性の確保
長時間に及ぶ沿岸部の海洋調査において昼間は他船舶や舟艇の往来が多く、自由に移動することが難しいです。
一方、夜間であれば他船はほとんどないため、安全に長時間調査活動を行うことができます。
帆船型ドローンは大きな帆を持ち、ライトアップすることで被視認性が高く、航行速度も低速なので他船からの発見回避も容易です。
長時間の洋上巡回・周囲監視が可能
長時間に及ぶ航行でも、終了後はバーチャルアンカリング(自動で位置を保持する機能)することで流されることなく洋上待機します。
これにより、夕方に航路設定、自動で夜間航行、朝明るくなってから回収という安全かつ遠隔操縦者にとって負担の少ないワークフローを実現可能です。
実証実験の成功を受けて
今回の実証実験の成功を受け、エバーブルーテクノロジーズは、帆走性能がより高い高効率型ヨットを利用し、12時間連続稼働実験を2021年秋ごろ実施予定です。
また、現在開発中の5mクラスのヨットを利用し、100kgの貨物輸送実験も実施予定です。
加えて、飛行型と帆船型ドローンのハイブリッドである「Type-P」の研究開発をシンガポール国立大学と共に進めています。
今回の実証実験に使用した「Type-Aプロトタイプ」は、全長2mクラスの無人操船ヨットとしてゼロからデザインされました。ヨットレースの最高峰であるアメリカズカップのレース艇や商船設計を手掛けるACT金井氏が無人ヨットに最適なトリマランとして基本設計、現役カーデザイナーなど多彩なバックグラウンドをもつ専門家によってリファインして3Dプリンタを利用して造形しました。現在、本格的な導入に向けて量産型の設計を行っています。
出典:エバーブルーテクノロジーズ株式会社「エバーブルーテクノロジーズ、帆船型ドローンによる夜間航行の実証実験に成功〜カメラやソナーによるリアルタイムモニタリング、防犯や捜索、長時間海洋調査を可能とする技術〜」